2014年秋、シャンパーニュ地方の南、コート・デ・バールに位置するChampagne Gautherotを訪ねた。永い歴史を持ち、清楚な佇まいの本社は、整然とした雰囲気につつまれている。
当主フランソワ ゴテロ氏の案内で、まず、小型飛行機で空からこの地域の葡萄畑をながめると、見渡す限りの広大な葡萄畑が拡がり、その豊かな田園風景が美しい。
Champagne Gautherotの自家栽培の葡萄畑は、約10度の勾配を持つ丘の南斜面にあり、まばゆいばかりの陽射しを浴びて、美しい葡萄が育てられている。
「父はケミカルが大嫌いだった。」と語るゴテロ氏は、葡萄の木の間にやわらかい草がいっぱい生えているところを指差し、「無農薬栽培にこだわっていることが、一般の人にも一目で判っていただけるはず。」と微笑んだ。
また、足許の石灰岩(Clay Limestone Soil)を手にとり、貝の化石を指差しながら「1億5000万年前、ここは海だった。このミネラル成分が、上質な葡萄を育て、深い味わいをもたらしてくれる。」と語る。
ブルゴーニュ地方シャブリ地区の土壌(キンメリジャン地層)に近いといわれるこのエリアの土壌が、上質な白ワインを想わせる味わいを生み出している。
オフィスと向かい合う同一敷地内にシャンパン製造工場はある。
ゴテロ家の畑で育てられた葡萄だけを使い、しかも一番搾りのキュヴェだけでつくり上げていく、この一貫した姿勢が、シャンパンづくりのポリシーとして貫かれている。
ひんやりとした工場の地下には、近代的な製造施設が整然と並んでいる。
ゴテロ氏は、ステンレス樽の前で「私の祖父は、この町の町長で、当時もっとも近代的な葡萄圧搾施設を作った人です。同時に、私たちは伝統的な手法にこだわりつづけ、その専門知識を代々受け継いできていることを静かな誇りとして、シャンパンづくりに情熱を注ぎ込んでいます。」と語る。
ロゼシャンパンもこうした伝統的で専門的な知識に基づいて、ピノノワールの皮にゆっくりと浸すマセラシオン製法で、今日もつくりつづけられている。
このような近代的な設備と伝統的な手法によって、Champagne Gautherotは生まれ、地下のセラーで静かに熟成されていく。